抗がん剤副作用の脱毛を予防する方法

完治が可能ながんが増えたことで、がん治療の質を向上させようという動きも増えてきた。

抗がん剤治療や放射線治療の副作用による脱毛は、がん患者、特に女性にとっての治療の苦しみを倍増させる。

しかし、がんの治療による脱毛症を予防する方法があるのだ。

がん治療で頭髪が抜けるのは、抗がん剤が毛根細胞を殺してしまうからだ。そこで、化学療法の最中に頭皮を冷やすことで、 抗がん剤の毛根への進入を最小化し、頭髪を温存する対処法が広まった。 民間療法ではあったが、効果が高かったのだ。

Dignicap

冷却による脱毛対策は、今では、米国食品医薬品局(FDA)に認証を受ける冷却装置まで開発済みなのだ。

がん治療による頭髪の脱毛を予防する頭皮冷却装置は、商品名DigniCap。 化学療法中の患者がヘッドギア型の機器を被り、コンピュータ制御で頭皮が冷却されるのだ。 原理は、従前のとおりに頭皮の冷却で血管を収縮させて毛根細胞への抗がん薬の到達を最小化するものだ。

2015年にFDAは当該装置を乳がん患者への使用で承認した。この際の臨床試験では、ステージI, IIの乳がん患者122人に対して脱毛の副作用がある抗がん剤が投与されたが、 被験者の66%以上が脱毛は半分程度に留まったのだ。

その後、乳がん以外への当該装置の有効性と安全性を示すデータが論文化されたことで、 乳がん以外のがん治療へも適用が広がった。

ただし、小児がんやその他の特殊ながん、さらには特殊な抗がん剤治療を受けているがん患者には禁忌とされている。

頭皮に抗がん剤を入れないことによる頭皮転移リスクが検討課題として残っているが、 治療の質向上を喜ぶべきだろう。

日本では、当該装置の独占販売代理契約を株式会社 毛髪クリニック リーブ21(大阪市) が締結したが、機器が無くとも「冷やす」ことでの対応も十分に効果があることを記しておきたい。

乳がんでも乳房摘出手術が不要な治療法

乳がん患者の20人に1人は手術不要でがん克服が可能になりそうだ。

乳がんでの乳房摘出手術を受ける前に遺伝子検査を実施することで、 手術をしなくても治るタイプの乳がんの見極めることが可能になったのだ。

手術が不要なタイプの乳がんを見極める遺伝子は、 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の研究チームが発見した。

乳がん組織の中にたんぱく質の1種である「HER-2たんぱく質」が多く、ホルモン療法が効かない乳がん患者群に見られる特色として、「HSD17B4」という遺伝子の働きが抑えられていることを発見した。この特徴のある患者には、手術よりも抗がん剤による化学療法が非常に有効に作用したのだ。 乳がん患者群は全体の10~15%を占めており、切除手術が不要で治療可能なのは5%程度と見込まれている。

つまり、日本で乳がんと診断される約9万人のうち、5千人前後は手術を回避したままに、治療治癒が可能となるのだ。

乳房の切除手術は体力的なダメージだけでなく精神的なダメージも大きい。そのため、手術の有効性を判断できるマーカーを特定した意義は大変に大きいのだ。

今後は、ステージ1~3の乳がん患者200人を対象として、約30箇所の病院で2年を掛けて、臨床試験を継続し、2021年の実用化を目指している。それと並行して、他のタイプの乳がんや卵巣がんへの応用も模索される予定だ。